寺報と今月の言葉


今月の言葉

「仏の世界がまします」という意味は、我々にとって我々の人生全体が迷いという意味を持って見いだされてくるということです。

 

  (平野 修 師)

 


寺報 平成30年4月発行

【本当に出会うことができる世界「欲生我国(よくしょうがこく)」】 
 私どもはその存在の根拠を自分の分別と理性においてきました。その理性に自分の根拠をおいてきたそのあり方は、今日のいろんな分裂を引き起こしてきておるわけでございます。今改めて思い出すべきことは、そういう一番の出発点は、本当にお互いが無条件に委(ゆだ)ね、無条件に受け入れるという、そういう世界のおかげなんだと。
 そして実はそういう世界、善導大師という方は常にその国土を求めるということを、「帰る」という言葉でおっしゃっておられます。「帰りなんいざ」、さあ帰ろう。理想に向かって進んでいくんじゃない、忘れてしまっていた、その一番原点に帰ろう。その原点に帰ってみたら、いのちというものがどういう関わりの中で、どのようにして守られ育まれてきたか。そのことをもし本当に受け止める時、何か思いが行き詰るということだけで、世を棄てるということはできなくなるんではないか。思いが行き詰るということは、ある意味自然なことなんでございます。生活の実感として大変なことですけれども、しかし本来、思いというのは行き詰るものでございます。どこまでも自己中心に立てた思いですから。しかし現実は自己中心に動いていないんです。自分の思いを主張し、自分の思いを何よりも物差しにして生きていく時には、必ずそれは行き詰まりを体験する。その行き詰まりを私どもが本当に受け止め、そこに一番出発点、いのちの原点を振り返させられる。行き詰まりの中でそういういのちの原点を振り返させられるということがあるなら、人間として生きるということが違った姿をもって感じ取られてくる。そこにはそれこそ、みなが無条件に身を委ね、無条件に受け入れるそういう世界が、実は一番本来の出発点の姿であった。そういうことが思い知らされるわけでございます。

 そういう、国ということが私どもの生活感覚の中によみがえってきます時、真宗では「無碍光仏(むげこうぶつ)」と言いますが、その無碍という言葉。無碍ということは何の妨げもなくスイスイと行くということでは決してございませんで、その妨げが転機(てんき)とされていく。妨げとは、行き詰まりでございます。その行き詰まりにおいて、私どもがいのちの本来に呼び帰されていく。そこに初めて妨げをとおして光に満ちた、光に満ちたということは私に関わってくださっている周りのすべての存在が見えてくる、そういう世界に気づかされていくわけでございます。   

                  (宮城 顗 師)

 


カレンダーの言葉 平成30年4月


荘厳地功徳成就とは、偈に「宮殿諸楼閣・観十方無碍・雑樹異光色・室蘭遍囲遶」と言えるが故に。
 此れ云何か不思議なる。
 彼の種種の事、或は一宝・十宝・百宝・無量宝、心に随い意に称うて、此の荘厳の事を荘厳し具足せり。浄明鏡の如く、十方国土の浄穢の諸相、善悪の業縁、一切悉く現ず。彼の中の人天、斯の事を見るが故に、探湯、及ばずの情、自然に成就す。

 

「探湯、及ばずの情、自然に成就」という、非常に含蓄のある、『論語』のことばを曇鸞は引いています。

 「探湯」と言いますのは、湯の中に手を入れてみることです。その時、熱ければさっと手を引く。
孔子は、『論語』(季子第十六)において、「不善を見ては湯を探ぐるが如くす」と言うわけです。

「不善」なるものを見たとき、それには近づいてはならないというふうに、すぐ手をひっこめるようにするのが、「探湯」という意昧なのです。また、「及ばず」というのは、同じところに、「善を見ては及ばざるが如くし」とありまして、善を見た場合に、到底、自分は及ばない者である。したがって、これからさらに善を行っていかねばならないというふうに、われわれの心を悪から遠ざけ、善に赴かせるということを表すのが、「探湯、及ばずの情」ということであると言います。
 「鏡」に照らし出されたわが身の姿を知ったときに、われわれに「探湯、及ばずの情」が「自然に成就」するのだ、と。つまり、生きることについての投げやりな心を離れて、命を惜しまずに努力の限りを尽くして生きていこう。命を節約しないで生きようという、生き方の選択がわれわれの上に起こってくることを言われたわけです。これが愛を生きることです。しんどいから適当にしておくというのは、命の節約です。ところが、命を節約することによって命が増えるわけではないのです。ちょうど、時間を節約すればするほど忙しくなるのと一緒です。
 このように、善への意志ということを言おうとした、孔子の『論語』のことばを用いて、曇鸞は仏道を歩むということは、愛を生きることであるということを表そうとされたかと思うのです。

教化センターリーフレット 平成30年4月号

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